PCB廃棄物に関連する罰則規定や主な製品は?|処理方法も解説

2025.11.18
PCB 処理方法

人体や環境へ有害であるとされているPCB(ポリ塩化ビフェニル)やPCBが含まれる油、PCB付着物は製造・使用が禁止されており、法律に基づいた厳格な処分が義務付けられています。

本記事では、PCB廃棄物の処理に関する罰則や処理する際の注意点などを詳しく解説します。

法律を遵守してPCBを廃棄し、企業の社会的責任を果たすための参考としていただければ幸いです。

PCB廃棄物の処理が必要となった背景

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、電気の絶縁性能や不燃性、安定性が優れた物質として電気機器などに広く用いられてきた化学物質です。

しかし、昭和43年(1968年)に食用コメ油にPCBが混入してしまったことで起こった食中毒事件(カネミ油症事件)がきっかけで摂取した人の身体だけでなく胎児にまで大きな悪影響を及ぼすことがわかり、昭和47年(1972年)に製造・輸入が禁止されました。

その後、PCBに関する問題は世界にも広がり、北極圏などPCB未使用地域でも汚染が報告されたことで国際的な規制対象となりました。

平成13年(2001年)に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約」にはPCBを含むさまざまな残留性汚染物質が指定され、平成16年(2004年)に条約締結国数が50カ国を超えたことによって正式な国際法として発行されています※1

参考:経済産業省POPs条約

※1:日本は平成14年(2002年)に条約へ加入

PCBが含まれている主な製品と使用場所

PCBが含まれている製品は、下表のようにさまざまな場所で使われています。

PCB廃棄物の処理を怠ることで生じる罰則

PCBを含む製品の処理は、法律によって厳格に定められています。

「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」、そして「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」によって定められている罰則をご紹介します。

【ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法】

事由罰則
平成38年(2026年)7月15日までに適正処理を行わず、環境大臣又は都道府県知事による改善命令に違反した場合3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科
環境省令で定める場合を除き、PCB廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けた場合等3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科
PCB廃棄物の保管及び処分の状況に関して都道府県知事(政令で定める市にあっては市長)に届け出なかった場合6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
PCB保管事業者の相続、合併又は分割により事業を承継した法人の承継の無届出又、虚偽の届出等30万円以下の罰金

参考:e-GOV 法令検索ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法

【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】

事由罰則
不法投棄法人には1億円以下の罰金
PCB等の特別管理産業廃棄物の収集運搬や処分の無許可営業、措置命令違反、投棄等5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科
基準不適合な収集運搬・処分業者への委託等3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科
マニフェスト虚偽記載等50万円以下の罰金
PCB等の特別管理産業廃棄物の管理責任者をおかなった場合等30万円以下の罰金

参考:e-GOV 法令検索廃棄物の処理及び清掃に関する法律

【濃度別】PCB廃棄物を処理するポイントと注意点

PCB廃棄物の処理は、製品に含まれているPCBの濃度によって処理方法が決められています。

PCBの濃度別に、処理する際のポイントや注意点をご紹介します。

高濃度PCB廃棄物の処理

高濃度PCB廃棄物とはPCB濃度が5,000mg/kgを超える物が該当し、法律によってJESCO(中間貯蔵・環境安全事業会社)のみが処理可能となっていますが、処理事業は令和8年(2026年)12月26日に終了します。

なお、注意点として期限内に確実に処理を終わらせるため、処理登録の受付自体は令和7年(2025年)10月15日をもってすでに終了しています※2

参考:中間貯蔵・環境安全事業株式会社|【お知らせ】PCB処理事業の終了に向けた高濃度PCB廃棄物の登録締切日について

※2:九州・大阪・豊田事業所対象地域(西日本)の処理事業は令和6年3月31に終了。その後発覚したPCB廃棄物は北海道事業所にて処理するが、受付は令和7年8月29日に終了。

低濃度PCB廃棄物の処理

低濃度PCB廃棄物はPCB濃度が0.5mg/kg超〜5,000mg/kgまでの物が該当し、JESCOではなく廃棄物処理法に基づいて環境大臣が認定した無害化処理施設、都道府県知事によって認可を受けた事業者が処理を行います。

処理期限は2027年3月31日ですが、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の制定以降の一部機器に汚染の可能性があることから、関連企業には早急な分析と処分への対応が求められています。

【製品別】PCB廃棄物の代表的な処理方法

PCB廃棄物の処理方法として、環境省がPCB等処理技術調査検討委員会を通じて評価、採用した次のような技術が代表例として挙げられます。

水熱酸化分解によるPCB廃棄物の処分

水熱酸化分解は、高温高圧の水を使用してPCBを分解する処理方法で、臨界点(374℃、218気圧)を超えた水を使用する「超臨界水酸化法」、水酸化ナトリウムを加えた超臨界状態の手前の状態である水を使用する「熱水分解法」の2つの方法があります。

水熱酸化分解は、廃PCBや紙くず、木くず、繊維くず、廃プラ、廃油、廃酸、廃アルカリなど、幅広い製品の処理で用いられています。

脱塩素化分解によるPCB廃棄物の処分

脱塩素化分解はPCBの分子に含まれている塩素原子を水素など水素などに置き換えて異なる物質に変化させる処理法で、代表的な方法としてアルカリ触媒分解法が挙げられます。

アルカリ触媒分解法は、アルカリとの反応を促進する添加剤をPCBを含んでいる絶縁油に加え、およそ300℃〜320℃まで加熱し、PCBを無害化させる方法です。

主に廃PCBや廃油、廃酸、廃アルカリの処理方法として用いられています。

プラズマ溶融分解によるPCB廃棄物の処分

プラズマ溶融分解は、プラズマ(電子と原子核に分離して電気を帯びたもの)をPCBに噴射し、PCBを分解させる方法です。

プラズマに触れたPCBは、科学結合が断たれて炭酸ガスや塩化水素、水素などへと分解されます。

主に廃PCBや廃油、廃酸、廃アルカリの処理で用いられています。

焼却によるPCB廃棄物の処分

1,100℃以上という高温で焼却されたPCBは、ダイオキシンといった有毒ガスを発生することなく分解されます。

そのため、水熱酸化分解と同じように廃PCBや紙くず、木くず、繊維くず、廃プラスチック、廃油、廃酸、廃アルカリなど、幅広い製品の処理で用いられています。

洗浄によるPCB廃棄物の処分

PCBで汚染された高圧トランス、コンデンサといった機器は、絶縁油と機器を分けるだけでは処理することができず、解体された各部材に付着したり染み込んだりしているPCBを、溶剤によって洗浄することが必要です。

トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンといった溶剤を使用し、化学反応の力によってPCBを分解・無害化します。

主に紙くずや木くず、繊維くず、金属くず、陶磁器くず、廃プラスチックなどのPCB汚染物、処分後のPCB濃度が0.5ppm未満の基準値をクリアしたPCB処理物に用いられます。

PCB廃棄物の処理は東亜物流までご連絡ください!

PCB廃棄物の処分期限はあとわずかな期間となっており、保有する企業には早急な対応が迫られていますが、PCBの運搬をするためには認可を受けた事業者による専用車両での対応が必要となります。

東亜物流はPCB廃棄物の収集・運搬に必要となる特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しており、PCB廃棄物の撤去や運搬を法律に則って対応しております。

運搬したPCB廃棄物は提携処分業者によって処理を行っているため、撤去〜処理、さらには処分に必要となる契約手続きや運行計画、報告書の作成に至るまで一貫してお任せいただくことが可能です。

処理期限が間近に迫ったいま、できるだけ早くPCBの処分を行い、企業としての社会的責任を果たすためにも、ぜひお早めに東亜物流までお問い合わせください。

まとめ

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は人にも環境にもさまざまな悪影響を与え、国際的にも使用が禁止されています。

日本ではすでに高濃度PCB廃棄物の受付は締め切っており、低濃度PCB廃棄物の処理も2027年3月31日までと、残された時間はあとわずかとなっています。

早急にPCB廃棄物を処理して法律を守るだけでなく、人を守り、環境を守って企業としての社会的責任を果たしたいとお考えの方は、ぜひ東亜物流までお問い合わせください。

残されたあとわずかな時間で安全・確実にPCBを運搬・処理し、生活環境を守るためのお手伝いをさせていただきます。